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お腹を開けずに観察できる?|犬や猫の胃カメラ「内視鏡検査」とは

  • 執筆者の写真: 侑姫 福原
    侑姫 福原
  • 6月13日
  • 読了時間: 5分

犬や猫がいつもと違う様子を見せていたら、「一体どこが悪いのだろう?」と不安になる飼い主様も多いのではないでしょうか。特に、原因がはっきりしない嘔吐や下痢、食欲不振などが続くと、「このまま様子を見ても大丈夫かな...」と心配になりますよね。


そうした時に役立つ検査のひとつが「内視鏡検査」です。これは、人間の胃カメラと同じように、体内を直接観察することで、不調の原因をより正確に突き止められます。開腹手術のようにお腹を切らずに体内を調べられるため、犬や猫への負担が少なく、安全性も高い検査方法として注目されています。


今回は犬や猫の内視鏡検査について、基礎知識から検査の流れ、診断できる病気、他の検査との違い、そしてメリットなどを解説します。



内視鏡検査とは?

内視鏡とは、先端にカメラとライトがついた細長いチューブ状の医療機器です。この機器を口や肛門などから挿入することで、食道や胃、腸といった消化管の粘膜を直接観察できます。


人間の医療では「胃カメラ」「大腸カメラ」として広く知られており、動物医療でも同様の技術が応用されています。



内視鏡検査が必要な症状と診断できる疾患

以下のような症状が見られた場合に、内視鏡検査が検討されます。


・嘔吐が何日も続く

・便がゆるい、血が混じっている

・食欲の低下

・急に体重が減った

・お腹を触られるのを嫌がる、痛がる


これらの症状がある場合、消化管に炎症や腫瘍などの病気が潜んでいる可能性があります。早めに動物病院を受診し、内視鏡検査による詳細な観察が必要になります。



診断可能な主な病気

内視鏡検査によって診断できる主な病気には、以下のようなものがあります。


・慢性胃炎・腸炎

・消化管のポリープや腫瘍

・猫に多い腸リンパ腫

・胃や腸の粘膜の潰瘍やびらん

・異物の誤飲誤食


これらは、通常のレントゲンや超音波検査だけでは判断が難しいケースも多く、粘膜を直接見ることができる内視鏡が非常に有効です。


血便が持続するダックスの大腸内視鏡検査(ダックスに多い炎症性ポリープの症例写真)
血便が持続するダックスの大腸内視鏡検査(ダックスに多い炎症性ポリープの症例写真)
内視鏡検査による猫の胃内異物摘出(胃内からガーゼと紐が発見された症例写真)
内視鏡検査による猫の胃内異物摘出(胃内からガーゼと紐が発見された症例写真)

検査の流れ・準備

内視鏡検査を行うには、消化管内に食べ物や便が残っていない状態が理想です。そのため、検査前日の夜から絶食し、胃や腸の中を空にする準備が必要です。場合によっては下剤や浣腸を使うこともあります。こうした準備を行うことで、検査中に粘膜をクリアに観察でき、診断の精度が高まります。



<麻酔の必要性と安全性>

犬や猫は検査中にじっとしていることができないため、内視鏡検査では原則として麻酔を使用します。麻酔に不安を感じる飼い主様もいらっしゃるかもしれませんが、事前に血液検査や心電図検査などを行い、安全に配慮したうえで実施されます。




<検査時間の目安>

内視鏡検査は、一般的に15分~30分程度で終了します。検査中の状況や生検の有無によって多少の差はありますが、長時間の負担がかからない点も安心です。



<検査後の回復過程>

検査が終わった後は、麻酔から覚めるまで院内で安静に過ごします。ほとんどの場合、その日のうちに帰宅でき、翌日には普段通りの生活に戻れることが多いです。



内視鏡検査のメリットと他検査との比較

内視鏡検査には他の検査方法にはない、以下のような点に優れています。



<内視鏡検査のメリット>

前述したとおり、内視鏡は消化管の粘膜を直接見ることができる点が大きなメリットです。粘膜の色やただれ、出血、隆起などを目視で確認できるため、画像診断では見つけにくい異常も的確に捉えることができます。


また、異常が見つかった場合、その場で組織を採取し、顕微鏡で詳しく調べる「生検」が可能です。生検は病気の種類や進行度を明確にすることができ、適切な治療方針を立てるために有効です。



<レントゲン検査・超音波検査との違い>

レントゲン検査や超音波検査は体外から体内の構造を確認する方法で、病変の有無は確認できても、その詳細までは判断が難しい場合があります。一方、内視鏡検査は体内にカメラを挿入して直接観察するため、診断精度が格段に高まります。特に、粘膜の変化や小さな腫瘍の確認には非常に優れた検査手段です。



<低侵襲性と回復の早さ>

内視鏡検査はお腹を切らずに体内を観察できるため、犬や猫の体への負担が非常に少ないのが特徴です。術後の痛みも少なく、回復も早いため、高齢の犬や猫、持病を抱えている場合にも適した選択肢です。



<猫のリンパ腫が診断できることが多い>

特に猫では、腸にリンパ腫という腫瘍ができるケースが少なくありません。この病気は超音波だけでは確定できないことが多く、内視鏡による観察と生検が確定診断のカギを握ります。早期に正確な診断を行うためにも、内視鏡検査は重要な役割を担っています。


猫の慢性嘔吐に対する胃内視鏡検査(リンパ腫が疑われた症例写真)
猫の慢性嘔吐に対する胃内視鏡検査(リンパ腫が疑われた症例写真)

まとめ

犬や猫の内視鏡検査は、消化器の病気を安全かつ正確に診断できる優れた検査方法です。原因がわからない嘔吐や下痢、食欲不振といった症状が続いている場合には、消化管の異常が関係している可能性があります。内視鏡によって粘膜の状態を直接確認し、生検で病気の正体を明らかにすることが、適切な治療につながります。


また、犬や猫の体に負担をかけず、高い精度で診断できる内視鏡検査は、現代の動物医療において欠かせない検査の一つです。気になる症状がある場合は、早めに動物病院に相談し、必要に応じて内視鏡検査の実施を検討してみましょう。


なお、台東区浅草にある当院では、犬や猫の内視鏡検査に対応しており、充実した設備と専門的な知識で健康管理をサポートしています。ご不明点や疑問などがありましたら、お気軽にご相談ください。






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