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猫のしこりやイボは腫瘍？ 良性か悪性かを見分けるには
- 侑姫 福原
- 10月10日
- 読了時間: 6分
猫をなでているとき、ふと指先に小さなしこりやイボのようなものが触れて、「腫瘍だったらどうしよう」「放っておいても大丈夫なのかな」と不安になった経験はありませんか？
猫は犬に比べて体調の異変を隠しやすいため、飼い主様が気づいたときにはすでに病気が進行していることも少なくありません。そのため、飼い主様の早期の気づきと適切な対応が、猫の健康と命を守る大切な鍵となります。
今回は猫のしこりについて、種類や注意すべき変化、診断方法、そして治療の選択肢などをご紹介します。
猫にできるしこり・イボにはどんな種類があるの？
猫の皮膚にできるしこりやイボには、以下のように良性のものと悪性のものがあります。
＜良性腫瘍の代表例＞
◆脂肪腫
脂肪のかたまりで、比較的高齢の犬に多く見られます。
◆皮膚嚢胞
皮脂や角質がたまることでできる袋状のしこりで、炎症を起こすこともあります。
これらは、基本的に命に関わるリスクは少ないものの、サイズが大きくなることで生活の質を下げてしまう場合もあります。
＜悪性腫瘍の代表例＞
◆乳腺腫瘍
特に未避妊のメス猫に多く見られる腫瘍で、その多くが悪性であることが知られています。初期には小さなしこりとして触れることが多いですが、進行すると周囲の組織に広がったり、肺などの他の臓器に転移したりする可能性もあります。
◆肥満細胞腫（皮膚型、内臓型）
皮膚型の場合、猫では一般的に犬に比べて悪性度が低く、手術によって完治が可能です。
一方で、消化管型は進行が早いため特に注意が必要です。進行すると全身に転移してしまうリスクがあるため、早期の対応が大切です。
◆扁平上皮がん
皮膚や口腔内に発生することが多く、表面がただれたり潰瘍を伴ったりすることがあります。
◆皮膚がん
皮膚に発生するさまざまな悪性腫瘍の総称で、種類により治療法や予後が大きく異なります。
これらは放置すると、周囲の組織への浸潤や全身への転移を引き起こす可能性があり、命に関わる重大な疾患となることもあります。
また、しこりの見た目や触り心地だけでは、良性か悪性かの判断は困難です。ただのできものやイボだと思っていたものが、実は悪性の腫瘍だったというケースも少なくありません。そのため、早めに動物病院を受診し、獣医師による検査が必要です。
飼い主様が気づきやすいしこりのサインとは？
猫は日常的にグルーミングを行い、自らの体を丁寧に舐める習性があります。そのため、しこりやイボが被毛に隠れて見えにくくなったり、自らの行動で隠してしまったりすることがあります。また、猫は違和感や痛みを感じたときに、狭い場所に隠れる傾向があり、これも発見を遅らせる一因となります。
さらに、愛猫が「しこりを触らせてくれない」と感じるような行動が見られる場合には、すでにしこりが痛みや不快感を引き起こしている可能性があります。このような変化は、日常的に触れ合っている飼い主様だからこそ気づける大切なサインです。
また、しこりの大きさや形が変化したり、赤みや出血、かゆみを伴っていたりする場合には、特に注意が必要です。なお、高齢の猫ではしこりができやすくなる傾向もあるため、日頃のスキンシップやブラッシングの際に皮膚の状態をよく観察し、少しでも異変を感じた場合には、早めの受診を検討してください。
診断方法
猫のしこりやイボの診断では、まず視診や触診が行われますが、それだけで良性か悪性かを判断することはできません。確定診断には、以下のような精密検査が必要です。
◆細胞診
細い針を使用してしこりの細胞を採取し、顕微鏡で調べる検査です。短時間で行えるため、まず第一に行われることが多い方法です。
◆病理検査
しこりの一部または全体を切除し、専門の検査機関で組織を詳しく分析します。これは、より高い精度で診断を行うための手段です。
◆画像検査
レントゲンや超音波（エコー）を使用して、しこりの広がりや、リンパ節・内臓への転移の有無を確認します。
これらの情報を総合的に判断して、最適な治療方針を決定します。また、診断の際、飼い主様から愛猫の様子を伺うことも診断の重要な手がかりとなります。たとえば「いつからしこりがあるか」「サイズや硬さの変化」「猫がしこりを気にしているかどうか」などの情報は、獣医師の判断に大きく役立ちます。
治療の選択肢と佐野動物病院での対応
治療方法は、以下のように診断結果によって異なります。
＜良性腫瘍の場合＞
猫のしこりが良性であり、かつ生活に支障をきたさない大きさであれば、定期的な経過観察で様子をみる場合もあります。ただし、大きくなってきた場合や場所によっては、外科的に切除することで生活の質を維持できます。
＜悪性腫瘍の場合＞
外科手術が治療の基本となります。腫瘍の進行具合や転移の有無によっては、抗がん剤治療や放射線治療を組み合わせることもあります。
当院では、肥満細胞腫をはじめとする一般的な皮膚腫瘍に対し、院内での手術対応が可能です。手術の適応については、猫種や年齢、全身状態を十分に考慮した上で、安全性を最優先に判断しています。そのため、手術の可否や費用に関しては「要相談」とさせていただいており、飼い主様としっかりお話ししながら、それぞれに適した治療方針を決定しています。
なにか分からないことがありましたら、お気軽にご相談ください。
安全性を重視した手術体制「ソノサージ」について
従来の手術では縫合糸を体内に残すため、まれに「縫合糸反応性肉芽腫」という合併症が発生することがあります。これは、体に残された糸に対して免疫反応が起こり、炎症や新たなしこりを引き起こす状態です。
このリスクを低減するため、当院では超音波手術システム「ソノサージ（Sonosurg）」を導入しています。ソノサージは、血管や組織に対して糸を使わずに処理できるため、体内に縫合糸を残す必要がありません。その結果、手術後の安全性が高まり、合併症のリスクを最小限に抑えることが可能になります。
なお、この機器を導入している動物病院は少なく、浅草周辺では対応可能な病院が限られています。当院では、この技術を取り入れ、動物の負担をできるだけ抑えた治療を心がけています。
まとめ
猫にできるしこりやイボは、必ずしも命に関わるものとは限りませんが、中には悪性腫瘍が隠れていることもあります。また、猫は不調を自ら隠す動物です。そのため、飼い主様が気づいたときにはすでに症状が進んでいるケースも少なくありません。
特に高齢の猫では、しこりが増える傾向があるため、日頃から注意深く観察し、少しでも異変を感じた場合は早めの受診が大切です。また、自己判断で様子を見るのではなく、動物病院で診断を受けることが猫の健康と命を守ることにつながります。
当院では、初期の診断から外科的治療まで一貫した医療体制を整えており、一般的な皮膚腫瘍の手術はもちろん、他院で「難しい」とされたケースについても外科専門医である院長に安心してお任せください。確かな経験と設備をもとに、安心して治療を受けていただける環境を整えております。
少しでも気になるしこりを見つけたら、どうぞお気軽にご相談ください。
犬・猫・フェレット・うさぎ・エキゾチックアニマルの診療は『佐野動物病院』
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